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◆先行き不安が増大する米国市場
2020.07.25 -
こんにちは、株の学校 マナカブ.com講師の中山です。
前掲のブログで「危険な時間帯に突入してきた」とお伝えしましたが、おおむねその通りの展開となりつつあります。
今週金曜日の米国株式市場はダウ、ナスダック、S&P500指数は3指数揃って下落となりました。
下落し始めたのは23日(木)ですが、週間発表の米新規失業保険申請者数が再び増加したことがきっかけとなりました。
米労働省が23日に発表した18日までの新規失業保険申請件数は141.6万件となり、前週の130.7万件から10.9万件の増加となりました。
この内容を受けて、景気回復の遅れが懸念され米国株は木曜日、そして24日(金)と続落する展開となっています。
日米株価ともに3月安値から回復の兆しを見せてきましたが、ここにきて米国のみならず日本でも感染者の拡大が顕著に出てきていて東京都では1日の感染者数が過去最高を記録する日々です。
小池都知事や西村経済再生担当大臣などが連日のように会見して警鐘を鳴らしています。
米国ではカリフォルニア州では経済活動再開を一部撤回し、州全域のレストランの店内飲食を禁止すると発表、秋から再開予定だった学校もサンディエゴ・ロサンゼルスと言った同州最大の2つの学区ではトランプ政権が求めている通学を再開せず、リモート学習のみにする方針を打ち出しています。
◆米国株の投資家はバカなのか?
実は、今回の失業保険申請者数が増加することはすでに予知出来ていたことです。
上図は米国の1日当たりの新規の感染者数をグラフで示したものですが、明らかに6月の下旬より増加してきたことが分かります。
感染者数が増えれば再開したお店も再び州の要請があれば再閉鎖を余儀なくされてしまい、これにより一時解雇(レイオフ)された人たちが再び増えたり、一時解雇から完全解雇になった人たちが増加することは火を見るよりも明らかです。
そしてそれは今回の失業保険申請者数が発表される前からその兆しを示していた指標があります。
それがミシガン大学が毎月公表している消費者態度指数です。
4月にこの数字は71.1をマークしてからそこから5月73.3、6月78.1と回復の兆しを見せていました。
しかし7月の数字は73.2(事前予想79.0)と予想を裏切り再び反落する展開となりました。
上図をご覧いただいても分かるように消費者の心理を表すこのソフトデータは概ね株価とパラレルに動くことが特徴です。
すでにこれが感染拡大による国民の先行き不安を示唆していたことになります。
前掲のブログでご紹介したこちらの指数も足元ではどうなっているのか・・・?
注目は一番長いラインが最新の状況を示す指標になりますが、こちらもさらに下落基調に拍車がかかっていることが分かります。
これを意識してか、これまで各国中央銀行がコロナ対策によりマネーを市場に投入したことにより超過剰流動性相場となり、株式のほかに金(ゴールド)にも資金が向かうことになっていましたが、足元ではこの動きに変化が見られ始めたことは注目です。
金は昔から安全資産としての位置づけであり、通常は株式と逆相関の関係で動きます。
金を保有しても利息が付くわけではないので、株が上がるときは株式に資金が流入し、金は安全資産であるためリスクオンの時は売られます。
しかしながら、コロナ後の2つの動きはパラレルに動いていました。
この理由は大きく2つです。
1:インフレ懸念
2:リスク回避
1は先ほど述べた過剰流動性により、お金の価値は下がります。そのためインフレに強い株式と同様に金も買われやすくなったと考えられます。
2はこれも先述した通り金は安全資産としてみなされる節が強いため、コロナショックの後どれくらいで経済が回復するのか、ワクチンはいつ開発されるのか、はたまた感染拡大により再度ロックダウンが実施されるのか、この辺りの不安心理を背景に安全資産としての需要が膨らんだと考えられえます。
◆ワクチンが開発されたとて前途多難
米国の大手製薬ファイザーやギリアドサイエンシズ、モデルナなど、英国ではアストラゼネカなどが熾烈なワクチン開発競争をしていますが、国を挙げてのワクチン開発が急務となっているだけに、ろくに治験もままならないまま上市されることを個人的には懸念しています。
おそらく初期段階で上市されたコロナワクチンははじめは称賛を浴びるかもしれませんが、様々な副作用をもたらしかねず、それが後遺症にまで発展する可能性もあります。
インフルエンザ治療薬のタミフルと同じような状況が起こりかねません。
正直ワクチンは毒を注入して無理やりに体の中に抗体を作るものなので良いわけがありません。
このスキャンダルによってまたその製薬会社には上市された後も一波乱あるものとみています。
話を株式市場に戻して、現在の感染者数は世界で約1600万人となりました。
そのうちの半数は感染者数トップ3の国で占められています。
それが上記の米国(424.8万人)、ブラジル(234.8万人)、インド(133.9万人)です。
この3か国でおよそ800万人であり、世界の感染者数の半分を占めています。
ワクチンが開発されたとしてもすぐにこれが感染の拡がっている上記の3か国にいきわたるかどうかはまた別の話であり、政府の財源がそこまで持つのかも心配なところです。
24日にトランプ政権は1兆ドルの追加経済対策の原案を取りまとめましたが、マーケットはこれを好感する動きとはなっていません。
内容は一人あたり最大1200ドルの現金給付を盛り込み、7月末で切れる失業保険を12月末まで延長することに充てられますが、給付規模は縮小となります。
しかしこれは正しい判断とみています。
今月13日に「◆失業して丸儲け」という表題で書いたメルマガの内容ですが、Bankrateの調べて分かったことですが、コロナの影響で米国人の49%が世帯収入がマイナスになっています。
中でも影響を受けているのは18歳から34歳の60%でレイオフや解雇でそうなりました。
しかし失業保険を申請することで、現在トランプ政権が実施している2.2兆ドルのコロナ対策の財政出動によりなんと働いていた時よりも収入が増えている人たちが受給者の全体の3分の2もいるということです。
この収入の増加により、最低賃金の労働者の消費支出がプラスの経済効果をもたらしています。
失業者数は過去に例を見ない数字となっていて、日本のメディアでは表面的な労働環境の厳しさばかりが取り上げられています。しかしながら、実際の失業者の懐事情は違うということです。
FRBはゼロ金利に加えて無制限の資産の買い入れ、社債の直接購入まで実施しており失業者の多くは上述したように可処分所得の実質的な減少は起こっていないこととなります。
しかし「人々が働いていたときよりも働かない方が所得が増える、その源泉は国の借金から」というのは誰が見ても普通じゃない状況です。
今回の追加対策に「より正常な給付金」となれば、マーケットもそれに伴って「より正常な動き」をしてきやすくなるということです。
来週は28日に株価との相関の強い7月の米消費者信頼感指数(コンファレンスボード)が発表されます。
こちらもミシガン大学消費者態度指数と同様に足元では底打ちし、6月は98.1となりました。
また実勢値で見てもYoYでみても株価との連動性も強いのが特徴です。
しかしながら直近は株価との連動性が薄れてきています。これはどちらかが明らかに行き過ぎている子をと示しており、個人的には株価が経済再開の期待感だけで上昇していった結果だとみています。
現在のコンファレンスボードの7月の発表前の予想は94.5となっており、おそらくですがこちらも6月から比べると悪化するのではないかとみています。
そして同日から翌29日にかけては8月のFOMCが予定されています。
コロナ後の対策として既定路線は変わらないと思いますが、株価の調整次第では日本が現行行っているYCC(イールドカーブコントロール)の話も俎上に上るのではないかとみています。
逆にこの話が俎上にすら上っていないということになれば、マーケットはやや失望から下押しの圧力が強まることも考えられます。
来週も相場をかく乱させるようなイベントが目白押しです。
そして再来週には7月の雇用統計が公表されます。
まだエコノミストたちによる予想は開示されていませんが、前月の雇用者数が480万人でしたが、今回はこれを下回る数字になる可能性が高いとみています。300万人行けばいい方じゃないでしょうか。
日本株においては目先ネガティブ材料が出やすい場面ですが、需給面から考えると、二番底を警戒して売り物が膨らんでいるだけに少し下がっただけでもショートカバーが入りやすく、悪い内容が出たとしても米国は下がったとしても日本株はそれに連れて大きく下がるような可能性は低いともみています。
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